第2章 対決

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 末永は、業務上横領罪で刑事告訴をされないようにする為に適当な開発事業をでっち上げ、開発資金が入ると嘘を言い形だけの合意書を取り交わしたのだ。要するに、虚偽とはいえ末永は8000万円を返済する意思を示したことになり、刑事事件での立件はほぼ不可能となった。ここからは民事紛争となる。唯でさえ告訴を受理したがらない警察が、この件に関してまず受理してくれない状態となったのだ。そうなれば、末永は大手を振って返済の請求を無視することができるのである。西崎弁護士の入れ知恵なのかどうかはわからないが、末永は残金を返済するだけの能力は無いと言い張り、残金7820万円の返済には応じないだろう。 (どこまで汚い奴だ!)僕は怒りが込み上げてきた。角田先輩も同様だった。 「山口部長は、相当落ち込んどって、会社に辞表を出すと言っとるで」 「角田先輩、こうなったら、何としても末永を業務上横領罪か詐欺罪で警察に告訴しましょうよ!」僕は隣の席の角田先輩と向かい合って前のめりになって話していた。 「お前さんも、わかっとると思うが、警察は民事事件の争いには手を貸さんぞ」 「でも、これは明らかに詐欺じゃないですか!こんなことが許されても良いのですか!」僕は角田先輩を睨みつけていた。 「そりゃわしも納得ができん。だがよう、吉村先生も匙を投げとるし、わしらにはどうにもできんぜ」角田先輩は今にも椅子からずり落ちそうな体勢になりながら嘆いた。 「いや、僕は納得ができません。警察署へ行って告訴状を受理して貰うよう担当の刑事を説得してきます」僕も警察は受理しないと分かっていたけど、末永に騙されたままでは、法務部としてメンツが立たないという思いが強くあった。それを聞いていた石田次長が僕の席までやってきた。 「今井君、角田君の言う通り合意書を交わしたということは和解が成立したということだ。そうなると警察は告訴状を受理しないよ。警察が民事不介入だってことくらい君だって知っているだろう」
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