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「でも次長、このままでは悔しいじゃありませんか」僕はしっこく食い下がった。
「今井君、落ち着きたまえ、我々も思いは同じだ。でも、刑事事件と言うのは、もし、告訴が受理されて捜査の結果、被告訴人が逮捕でもされたらその人の人生はそこで終わってしまうこともあるんだぞ。人の一生を台無しにしてしまうことに、警察は易々とは動かないし、また動いてもらっては困る。君の感情だけで悪戯に告訴をしない方がいい」石田次長は懇々と僕を諭してくれた。
石田次長は僕に諦めろと言うのかと思いきや、「今井君、西町警察署の刑事課に本田という課長がいる。その人に話をつけておくから相談にのって貰いたまえ」僕に警察へ行くよう促したのであった。
「石田次長、その本田課長という人とは、どういうつながりなのですか?」
「以前、県警の捜査四課、すなわち暴力団担当の刑事だったころ、当社の株主総会の総会屋対策でいろいろお世話になったのさ」
「へえー、警察に知り合いがいれば心強いです。ありがとうございます」
「本田課長は強面だが、正義感に溢れていて、とても勉強熱心な人だ、何か良いアドバイスが貰えるだろう」石田次長は、そう言うと何故か薄っすらと笑みを浮かべていた。
石田次長にアポを取ってもらい、三日後、僕は本田課長に会いに西町警察署へ向かった。
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