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夕陽
男との時間はまだ続いた。
一度、どんな仕事をしているのか聞いてみたことがある。夜間の仕事だと男は答えた。
その頃はほぼ毎日14時から24時までのプランでホテルにいた。夜間が何時から何時をしめすのかわからないが、いったいいつ働いているのだろう。
私にとっては都合の良い状況なので男がどんな仕事をしていてもかまわなかった。どうせろくな仕事ではないだろう、そうも思った。
男がどこで何をしていてもかまわない。私の思う通りにさえしてくれればそれでいい。
そういえば、と男が言う。職を変えた私にシャツでもプレゼントしようかと思っているらしい。
私はわざと男が買えるぎりぎりの範囲の値段のブランドを告げた。それが欲しいわけではなく、男がどこまでできるのか試してみたくなっただけのことだ。
少し間があいて男は「それって人にねだる値段のもの?普通はもっと遠慮があるよね」と言った。
それなら最初から買うだなんて言わなければいいのに、ほんとに頭の悪い男だ。
そうかもね、と答えながら海を見る。こんな男と居ても海は相変わらずの色で、夕陽まであと少しもうこの男が話さなければいいのにと思う。
こんな夕陽は彼と見たかった。なぜ横にいるのがこんな男なのだろう。小さくため息をついて窓を開けた。
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