執着

1/1
前へ
/44ページ
次へ

執着

男は私を欲しがった。毎日会って抱き合っているのに私が男を彼氏だとは言わないことでいろんな駆け引きをしかけてきていた。服が欲しいと独り言を言えば「彼女なら買ってあげるけどさ」といい、なにかにつけ彼氏になりたがり彼女にしたがった。 じゃあ、あなたも私の他に彼女を作ればいいじゃない、私には最初から彼がいるんだから別れてあなたと付き合うことはない、とはっきり告げたその翌日、「彼女ができた」と報告してきた。嫉妬させようとしているのは明らかだったが、嫉妬心はなかった。「そう。で?これからはどうするの?」 「このまま関係は続けたい。真波には彼氏がいるんだからこれで対等だ」 本当に的外れな男だ。体を重ねるのは好きだったけど、この男を好きだと思ったことは一度もないのにいつもこうやってわたしを揺さぶって思う通りにしたがる。どんなに私に執着しても、この男のものになる日なんて絶対にこないのに。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加