第27話 距離

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「胎児の形からするに、今は十週目というところでしょう」 白衣を着た男性の口調は、事務的で淡々としていた。 「特に異常は見られません。健康状態は母子ともに良好です」 理子も、太郎も、二人も、なにも言葉を発しなかった。 というよりは、言葉が出ないという状況に近かった。 そんな空気であるので、白衣を着ている看護婦も、大変言いにくそうに「それで、あの。小松原さんには、どうお伝えすれば・・・」と切り出した。 「ちょっと待って。」と理子。 「母親の有子さんにも、まだ言わないで」 理子の頬を、涙が伝った。
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