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「お昼ですよ」
ドアを開け、それらしい台詞を言う。
椅子から有里子が立ち上がった。
ユリエは特に反応することなく、窓の向こうを眺めている。
そんなユリエを気にとめる事なく、女は、ワゴンをベッドの隣まで移動させ、手を動かした。
「お母様。今後の治療の事で、話があるそうです。九階の相談室までお越し頂けますか」
「えっ」
有里子の表情は不安そうになる。
「先生は今日、一時から不在になられます」
有里子が腕時計を見ると、十二時を回っていた。
「ユリエさんの食事は食べ終わるまで、私が見ておきますから、大丈夫ですよ」
「あら、そうなの。じゃあお願いするわ」
「大丈夫ですよ。ただ、食べるまえに血圧だけ計っておきますね」
白いマスクをしていても目元だけで微笑んでいると分かるくらいに、女は笑みを浮かべた。
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