第1章

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 飛び込み台から出て、目の前にあるプールへと視線を向ける。深さ約3m。長さは50mはある。水はまだ抜いていない為、今から抜かなければ掃除は出来ないが、  「もうめんどくさいから、明日でいいか。 先生に一応聞こう」  八尋は手足の疲れもたまっており、さすがに水を抜いてから、また掃除をする気力が無くなっていた。デッキブラシとバケツをプールサイドに置き、一つしかない出入口から出て、職員室へと向かった。  校内は部活も休みである為か、渡り廊下をあるいている間は、誰ともすれ違うことがなく、職員室の扉の前に辿り着いた。スライド式のドアをノックし、ゆっくりと開ける。  「すいませーん。失礼します」  いつもの常套句を口に出し、職員室の中を伺う。顧問の姿を探していると、後ろから右肩を小突かれた。  「いって!」  「何だ。もう掃除は終わったのか?」  振り返ると、綺麗に生えそろえた顎髭を右手でさすりながら、眉間に皺を寄せている男性の姿があった。部活動で見慣れた顧問の森崎である。森崎は未だに髭をさすりながら、 めんどうであるかのように八尋に言う。  「まさかさぼってるんじゃないだろうな」  森崎の独特の迫力と声に少したじろぐが、 八尋は精一杯両手を振って否定する。  「違います!違います!一応、プールサイドと飛び込み台までは掃除終わったんですけど、水抜きまでしないといけないかと思ってですね」  「水抜き?今からなら、かなり時間かかるぞ。何で先に抜いておかなかった」  「いやー暑さで頭がおかしくなってたみたいで」  「ふざけたことを抜かすな!」  バン!っと森崎は片手でドアを叩き付ける。 ドアにはめ込まれているガラスにひびが入りそうな勢いだ。    「すみません......」  内心では毒づいていたが、すぐに顧問に頭を下げる。その姿を見て、少し興奮が治まったのだろうか。森崎は口元に笑みを浮かべ、  「仕方ない。では、水抜きまでは行っておけ。中の掃除は明日にずらしてやろう」  その言葉を聞き終わるか否かの狭間には、 八尋は森崎の脇をすり抜け、プールの方角へと走っていた。背後から怒鳴り声が響く。  「廊下を走るな!あと、水が抜けたことも確認するように!」  水泳部に所属している八尋には分り切っていることばかりだ。水抜きの際には、排水溝が詰まっていると最後まで出来ない為、必ず
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