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椅子に腰掛けたままのバシリーは、ギルベルトの胸に頭を抱き込められる格好になる。
ドンドンと早鐘のような鼓動が、鼓膜を、バシリーの胸を揺らした。
「私は、バシリー以外を娶りたくはないが、我が血を引く子は絶対に欲しかった。だから、バシリー、二人目は私の子を……レオの弟か妹を産んで、私の妻となって欲しい。夜伽などではなく、夫婦の営みとして……バシリーと……」
この主君の願いを、叶えなかった事などあっただろうか。
いつもいつも、甘やかしてしまうのは。バシリー自身も、ギルベルトが誰よりも大事だったからだ。
ギルベルトの跳ねる心臓の音を聞いて、バシリーはようやく自覚した。
そして、自分がどう振る舞うべきなのか、はっきりと理解した。
「……分かりました」
ギルベルトの頬にそっと手のひらを添わせる。
白く美しい顎を指先でたどると、ギルベルトはぞくりとした表情で目を細めた。
「今から俺たちは主従ではなく、夫婦ですね」
「ああ、バシリー!私を……!?」
心底嬉しそうな笑顔を浮かべるギルベルトに、バシリーも微笑みかけてやる。
そうしながら、頬を撫でていた手を振りかぶり……全力で平手をかました。
バチイイン!!
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