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産婆の指示に従い、痛みの波が強くなった瞬間に、下腹部に力を込める。脂汗が飛び散り、食いしばった歯は欠けそうだった。
しかし、一瞬の激痛のあと、驚くほどスポンとその痛みが消えた。
ぱかりと開いたバシリーの足の間から、大きな白い繭のようなものが飛び出してきて、産婆の手に受け止められる。
「はあ、はー、はー、えっ、お、終わった?」
「ああ、終わったとも!私の弟は無事に産まれたのだ、ああ、バシリー、ありがとう!」
終わってしまえばあまりに呆気ない出産に、バシリーは目を白黒させる。自分の尻から飛び出してきた繭の中に神の子がいるなんて、信じられないくらいだった。
放心しているバシリーの隣で、ギルベルトは感極まったようにポロポロ泣きながら、バシリーの頭をしきりに撫でている。
産婆が繭を解くと、中からは金色の髪を持つ赤ん坊が出てきて、ふびぇー!と産声をあげた。
その声を聞いてようやく、本当に子を産んでしまったのだと実感する。
まだ涙は出ない赤ん坊の目がうっすらと開く。ちらっと覗いた瞳は、バシリーと同じ青色をしていた。
「……ああ、なんて愛おしい……見てくれバシリー……世界一可愛らしい赤ん坊だ」
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