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寂しがり屋のギルベルトの為にと、先王様はバシリー含め数人の少年を近衛兵としてギルベルトの側に置いた。結局、人見知りだったギルベルトはバシリー以外とはあまり打ち解けず……いつも二人で一緒に居たように思う。
「……まあ、ギルベルト様似の赤ん坊なら……可愛いがれるかな……」
自分に言い聞かせるように、そう呟いてみた。
正直母性などはまだ湧かないないし、今こうして寝顔を見ていても、愛おしさより困惑が強い。
だが幼馴染の顔と自分の瞳を受け継いで産まれてきたこの子なら、やがて愛する事ができるのはず。
赤ん坊の寝顔を見ていると、バシリーも眠たくなってきた。
疲れきった体を寝台に沈み込ませると、目を瞑る。
「バシリー、起きているか?」
しかし眠りに落ちる前に、控えめに扉を叩く音と共に、ギルベルトが声を掛けてきた。
今はあまり人に会いたい気分ではない。主君にたいして不敬だとは思うが、毛布に潜り寝たふりをする事にした。
返事をせずにいれば、また後ほど改めてくれるだろうと思っていたら、なんとギルベルトはそうっと扉を開けて中に入ってきた。
ギョッとしたが、そのまま寝たふりを続ける。
赤ん坊の寝ている寝台の方へと足音が近づいていく。足音が止まると、ほうっと小さなため息が聞こえた。そして、クスクスと笑う声。
どうやらギルベルトは、弟の顔を見にきたようだと納得する。よほど、弟ができたのが嬉しいのだろう。
しかし。それだけではなかった。
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