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これは中々に見れない貴重な光景を目の当たりにしている。
齢80のおじいちゃんと23歳脂ののった若者との静かな火花の攻防戦。
目から青いビームが出ている、気がする。
なんかそのうち、ブォンブォン言わしながら青光りするソードででも一戦交えそうな雰囲気だぞ。
早朝のコンビニで宇宙戦争勃発、とか。ウケる。
今の妄想は、目の前の棚に置かれてあるクジ引きの景品が、視界の中に入っていたから思い付いたものなのだろう。刷り込み、恐るべし。
そうだ、とりあえず塚田さんのお買い上げ商品の精算をサクッと済ませようそうしよう。
「おっ、スゴい。塚田さん、777円ですよ。今日は新台入れ替えの日だから、幸先良さそうですね」
塚田のおじいちゃんは、無類のパチンコ好きでもある。
このコンビニが第1の憩いの場だとするなら、近所にあるパチンコ屋【WIN】は第2の憩いの場なのだ。
「そうかい。そりゃさっさと並ばないかんわい。また戦績知らせにマンガの兄ちゃんに言いにくるからそう伝えておいてくれるかの」
これで私への執着は遥か忘却の彼方へ。頭はすっかりパチンコの方に傾いてるな、よし。
「分かりました、気をつけて。行ってらっしゃい」
うちのコンビニにバイトに来てくれているマンガの兄ちゃんこと那智君は、某超有名漫画家のメインアシスタント兼パチプロで、塚田のおじいちゃんは那智君に弟子入りしているのだ
「行ってくるぞよ、我が愛しのスイートピーチちゃん」
あ、忘れてなかった。私へのしわくちゃの愛。
「ありがとうございます、またお越し下さいませー」
面倒くさいお客さんへの棒読み無表情無感情スルーは、コンビニ店員の基本中の基本だ。
「羽生君、トイレ掃除に行ってくるから、代わりにオペノートに塚田のおじいちゃんのこと書いておいてくれないか。負けたら荒れるだろうからな」
それこそ9割9分9厘、負けるだろうがな。
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