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【序章】
人生最初の記憶は何処から来るべきか。
一般論で考えるならば(一例として)、優しい母親の微笑みとか、父親の大きな手とか、あるいは祝福の空気感とか、そういうものが望ましいのではないか。
しかし自分には、そんな記憶はなかった、からきし。最初に覚えている記憶は、睨み付ける若い女の顔、その後に飛んでくる痛み(平手打ち)、無表情な男、その後に味わう瞬間的激痛(煙草)と永続的な熱さ。
特にその傷みを伴う熱さは、ふと気を抜いた直後に、その箇所から、何か言い知れぬどす黒い煙が立ち上ぼり、それが自身を包み、四股を掴んで、引き千切るのではないと思うほどだった。
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