【序章】

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 その男女はどうやら、自分が泣き叫ぶほどに加虐的になるようで、それに気づく頃には、身体の至るところに酷い傷跡と、焼け跡、内出血からくる青アザが出来ていた。  当初、泣くことは止められなかった。泣けばなくほど傷が増える。そうして学習(?)した自分は、泣くことを止めた。厳密に言うと、泣くという感情がすっぽりと、まるで燃えるごみに回収されたように、無くなった。  壊れた、というのかもしれない。心的外傷からくる感情の欠落が発生し、幼い自分から涙を奪ったのだ…心療内科的に言うならば、こう表現されるかもしれない。 「泣くことは悪なのだ。男女に煩わしい思いを抱かせてはならない。」  それは自身が人生で最初に学んだ事だった。たとえその男女が自分の両親だとしても、何も求めてはならない。求めれば裂かれ、焼かれる。自分はそうして幼少期を、深海の貝のようにして過ごした。
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