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「私は記憶を取り戻したけれど、彼は思い出していないようだ。波風は立てたくないし、いつの日か思い出してくれると信じているから待とうと思う。この命が尽きても」
彼女の日記を読み終えた私は、全てを思い出したのだ。
ずっと探していた愛しい人。生まれ変わっても探し続けていた私の片割れ。
出会っていたのに、見つけられなかったことに後悔した。
今さらか?いや、今からでも!
いても立ってもいられず住所を頼りに彼女の家に行くと、ちょうど病院へと向かうところの息子さんたちに遭遇した。
私は彼らに「彼女に会わせて欲しい」と申し出た。
「それが……今、病院から連絡があって……」
私はまた間に合わなかった。
彼女は突然逝ってしまったのだ。私を置いて……。
息子さん達の計らいで葬儀に参列させてもらうことが出来た。死に顔は見られたくないというのが故人の希望だったので、対面することは叶わなかった。
彼女が荼毘に付されたあと、私は息子さんたちに声をかけられた。
入院していた病院のベッドの、枕の下から出てきたのだと、私宛ての一通の手紙を渡された。
私は丁寧にお礼を言って、その手紙を受け取り斎場を後にした。
家に着くまで待ちきれず、帰りの電車の中で手紙を読み、私は人目もはばからず咽び泣いた。
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お久しぶりです。
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