(prologue)

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それから何日、何週間が過ぎただろうか。ナルキッソスは何も口にすることがなく、衰弱していった。しかしやつれてもなお、その美しさは衰えることを知らない。 見かねた神々が、代わる代わるナルキッソスに「せめて食事を摂るように」と助言をしに行ったのだが、自分の姿に恋をしてしまった彼が気の毒で、誰ひとり本当のことを教える者はいなかった。 彼は湖面に映る愛しい人がやせ細っていくことを心配し、優しく声を掛け続ける。 「そんなにやせてしまって……。どうしたの?大丈夫?」 それからさらに何日もの時間が過ぎ、それでも湖のほとりから離れないナルキッソスを見兼ねて、ある日ひとりの女神が、とうとう彼に本当のことを伝える決心をした。 「ナルキッソス、お前が愛しく思い慕う美しい人は……」 声をかけた女神は言葉を失った。 ナルキッソスはその場で息絶えていたのだ。湖面を覗き込み、愛しい人を心配し、心から愛しながら。 女神はナルキッソスを不憫に想い、彼のその頭をもたげた亡骸を花の形に変えた。 これがナルキッソス、水仙である。 その後、彼の魂は天に召され、浄化され再生した。 生まれ変わり、再び地に降り立ったのだが、あまりに強い恋心で愛しい人を求めたが故に、一つのはずのナルキッソスの魂は二つに分かれ、ひとりのものではなくなってしまっていた……。
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