0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
(3)
仄暗く温かな部屋で漂い、その日を待つ。
君に会える日だ。
長い間、君には無理を強いてきた。
もうすぐ、もうすぐ会えるよ。
最初に僕に触れるのが君じゃないことは我慢するよ。
眩しいくらいに明るい世界から、一瞬にして絶望の世界へと突き落とされた気分だ。
声を張り上げる僕の傍らで、君の命の灯火か消えようとしている。
慌ただしい室内で、僕は何も出来ないまま、ただ泣き叫ぶしかない。非力だ。
「残念ですが、母体が持ちませんでした……」
何を言っているの?
やっと会えたのに。ずっと君の中にいたのに。
嫌だ。
また離れ離れになるなんて。
ひとり残されるなんて。
恋敵に育てられるなんて、真っ平御免だ。
ああ、神様!
いっそ僕も彼女の元へ……!
それが叶わぬのなら、せめて僕の記憶を奪ってください。
ああ、愛しい君よ。
今度は僕が、君を産んであげる。
最初のコメントを投稿しよう!