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(5)
せっかくひとつになって生まれたのに、お互いの顔を見る事すら出来ない。
大人たちは僕たちを引き離そうとしている。
世界中で例のない手術になるって、みんなが僕たちを見に来ている。
いっそのこと僕たちはひとつでいたいんだ。
身体中を駆け巡る、細胞ひとつひとつに行き渡る血液さえもひとつでいたいんだ。僕たちはこれで満足なんだ。
それでも大人たちは僕たちの想いに関係なく引き離そうとする。
カチャカチャと、消毒液の匂いの充満する部屋の中に金属音が響き渡る。
せめてもの抵抗に、この血を流そう。
大人たちは慌て出す。
お願い。
「僕」の顔を見せて。
ずっと見ることの叶わなかった、もう一人の「僕」の顔を。
ねえ、お願い。
連れて行かないで。
「僕」を連れて行かないで。
さっきまでひとつだったのに。
せめて最期に愛しいその顔を見せて。
ああ、周りが騒がしい。
悲鳴にも似た声と、金属音が頭に響く。
痛いのは嫌だ。
……でももう、痛くない。
騒がしい音も、だんだんと遠くに聞こえる。
さっきまで熱かった背中も、今は氷のように冷たく感じる。
お願い、たった一度。
僕のこの目が見えているうちに、「僕」に会わせて。
せめて最期に一目だけでも……。
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