1103人が本棚に入れています
本棚に追加
/405ページ
最終日は本当にどうしようもないほど、2人でゴロゴロした。
午前中にレンタルしてきた映画を観ながら、宅配ピザを食べて、観終わったらゴロゴロして、夕ご飯はコンビニに買いに行った。
「本当にコンビニで良いんですか? 作りますよ?」
と言ったが、
「式は忙しかったし、明日から会えないし忙しいのだから、今日は何もしないとこうって決めたじゃないですか。」
「そう、ですけどぉ……。明日から作ってあげられないのに。」
「食事の為に入籍したわけじゃないでしょ? 花さん、明日からちゃんと結婚指輪はめて下さいよ? 取ったら駄目ですよ?」
と、コンビニまでの道中にデレてくれる。
「はめてます!ほらっ。」
手を前に見せる。
結婚指輪の下には婚約指輪もはめていた。
「ダブルですね。」
と、公太さんも嬉しそうに言う。
「明日、帰ったら一番にお姉ちゃんに芸能人の結婚会見みたいな事するんです。」
と言うと、
「芸能人の結婚会見?」
分からないという顔をするので、数歩前に早足で出ると振り向いて手を顔の前に出す。
「これです。 こういうの。観た事ないです?」
「あぁ………。あります。それ、ちょっと恥ずかしいかな…。」
「ええ~。ぜーったいやります。 この印籠が目に入らぬかぁ!って感じで。」
「花さん、それ既に間違ってます。」
「ふふっ。何でも良いんです! 見せびらかしたいだけなので……。」
コンビニまでの道のりがカラフルな色に染まっているみたいに綺麗だった。
好きな人といるだけで、世界はこんなに綺麗なんだなと思えた。
掃除をしてても、洗濯をしてても、ゴロゴロしてても、全てが楽しくて仕方なかった。
我が儘を通した結婚だった。
公太さんを騙して結婚した。
幸せで、そんな事を忘れてしまいそうだった。
後ろ髪を引かれる思いで、次の日、朝早く電車に乗った。
あと何日、公太さんの「奥さん」が出来るのか、今はそれが1日でも多い事を願うだけだった。
最初のコメントを投稿しよう!