1139人が本棚に入れています
本棚に追加
ヘアメイク担当の美容師さんが控え室に来て、ヘアメイクが始まる。
離れたソファーでは軽めのお昼ご飯が置いてあり、それを可奈さんと子供達が食べている。
「お姉ちゃんもお昼食べてきて…。」
メイクをされながらそう言うと、
「後で花と一緒に食べるわ。」
と、鏡に映る私のメイクをずっと見つめている。
「私、食べられそうもないわ。緊張して……。」
「馬鹿ね。少しでも入れておかないと、誓いの言葉の時にお腹、鳴ったらどうするのよ? 恥ずかしいわよ?」
と言われて、想像すると、恥ずかしい。
「食べようかなぁ…。」
というと、ヘアメイクさんが、
「口紅は、控え室を出る前につけるように担当に伝えておきますね。 あと、ティアラは? どちらですか? 付けるように言われているのですが…。」
「えっ? 知りませんけど?」
そう私が答えると、
「はい。ちょっと待って……これ、これです。」
と、姉が鞄から箱を取り出し、メイクさんに渡す。
メイクさんが箱から出して開けると、そこには沢山の花をあしらった王冠があった。
その花には見覚えがあった。
公太さんがくれたしおりやネックレスとよく似たデザインの花だった。
「これ……………。」
メイクさんが頭に装着させる。
「これで、全部終了です。 うん、綺麗ですよ。 では、口紅はお食事されてから、お部屋を出る前に確認するよう言っておきますね。私はこれで失礼します。」
ヘアメイク担当さんはそう言うと部屋から出て行った。
「お姉ちゃん、これ……………。」
「似合ってる。 公太さんが試着の後に、他の人見て気付いたらしくてね。 大急ぎで作ってもらったんですって。しおり作った人、お店の方に聞いたら直接そこに卸してたそうで、近くで工房やってらして、頼みに行ったそうよ。 私は無くてもいいと思うと言ったのよ? でも公太さん、思いついちゃったから頼んでみるって。 昨日、出来たとこだって。さっき、物々交換したの。」
ちょっと涙を我慢する。
お化粧が落ちてしまう。
「物々交換て、何を交換したの?」
「お父さんの写真。 打ち合わせしたのでしょ?」
と、言いながら、サンドイッチを持ってくる。
「うん。写真持って入場してくれるって。」
「良かったわね。 ほら、食べなさい。前掛けと、大きめのタオル持ってきた。これ、膝に乗っけて……。」
「子供じゃないからぁ…。」
「後悔しても知らないわよ?」
最初のコメントを投稿しよう!