結婚式

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「万が一、マヨネーズでも垂れたら、公太さんのドレスを無にする気?」 と、脅されてされるがままタオルをひざ掛けにする。 三角形の小さなサンドイッチを頬張る。 あと、1時間を切った。 30分前位から、お義兄さんや公太さんのご両親、お姉さんも部屋に挨拶に来てくれた。 控え室が親族顔会わせの場になった。 しばらく賑やかで、いろんな所で様々な話題が飛び交っていた。 公太さんが部屋に入って来て、 「いい加減にして下さいよ。ここは花嫁の控え室ですよ。みんなはそろそろ式場に行ってください。 花さん、僕たちも事前写真を撮るのですが……。」 飲み物を飲んでいた私は、そうだった!と慌てた。 式の30分前に、別の部屋で写真を撮ることになっていたのだ。 急いで行こうとすると、 「花! 待って。急に動かないで。 口紅も付けないと……。」 お姉ちゃんに口紅を付けてもらい、後ろの裾を踏まないように手でまくしあげて持たせてくれる。 担当の方がヴェールを持って付いて来てくれる。 「はい。気をつけて。 後でね。先にチャペルに行ってるわね。」 「ありがとう。お姉ちゃん。 後でね。」 ドアの所にいる公太さんに近ずくと、公太さんは手を差し出した。 「急ぎますけど、走らず慌てずで。」 と言い、私の手を取る。 手を繋いで慌てずに足早に移動する。 その途中、 「良かった。 すごく似合ってます。勝手に用意してすみませんでした。」 と公太さんが謝るから、 「とんでもない。嬉しかったです、お気持ちが…。」 と、繋いでいた手をぎゅっと握った。 3ポーズ写真を撮ってから、チャペルの前に移動した。 扉の前には、可愛い天使が二人待っていた。 並んで入場の準備をする。 天使はヴェールの端を持ち、2人とも落ち着いている。 私の方がカチコチだ。 ふと、公太さんの手にある写真が目に入る。 「それはお姉ちゃんが準備したのですよね?」 「はい。 わざわざ白い模様入りの額縁を探してくださったそうです。模様、花ですよ。」 よく見ると、額縁の模様は花だった。 花の中で父が笑っている。 「あぁ、もう! 何でみんな、泣きそうになる事ばっかりするんですか!」 と、上を向いて言う。 公太さんは笑いながら、 「さぁ。ロボットにならない様に頑張りましょうか。」 と、腕を出した。 腕を取って、一歩、一歩、歩き出した。 私は本当に幸せな人間だ、と思った。
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