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「大丈夫ですか?」
車が再び走り出してからも、顔色はすぐれない。
「えぇ。すいません。昨夜、緊張で睡眠不足で、もらった用紙、何度も読み返して、控室でも
予定表穴が開くほど見て、落ち着かなくて歩きまわって・・・。自業自得と云うのでしょうね。」
と、公太さんは笑う。
「控室で横になっててくれればよかったのに・・。」
「いやぁ・・・・・。本当に落ち着かなくて・・・。姉さんにも、意地悪言われてしまうし・・。」
「なんて?」
「卒業だ!ホフマンだ! 花さんをさらいに元彼が来るんだ!って、それはもう嬉しそうに・・。」
「ふふっ。ふふふ・・・・・・。ないです・・。それはないですよ。」
私は大笑いした。
「いや・・・・。もう、本当に無事終わってホッとしたらドキドキしちゃって・・。念のために先輩と落ち合う約束してたんです。先輩もせめて花ちゃんに直接、おめでとうが云いたいと言うのでちょうどいいかな?と思いまして。」
「良かった。公太さん、顔色少しよくなってます。」
「そうですか?」
「ホテルに着いたら、休みましょうね。お互い、朝からバタバタでしたもんね。ゆっくりしましょう。」
「そうですね。 何か食べましょうか?お腹すきません?」
公太さんがそう聞くと、意識したのか私のお腹が鳴った。
「・・・・・・・食べたんですけどね・・・・・?サンドイッチ。」
と言うと、顔を見合せて二人で大笑いした。
「僕は1個つまみました。さすがに緊張でのどを通りませんでした。 この時も姉に散々、いじられて・・・・服が汚れるとか、ドジをするとか・・・・・。あの人いると心が休まりません。」
と、公太さんはやれやれと言いながらも、嬉しそうに話す。
その様子に、
「実は・・公太さんて・・・マゾっけありますか?」
と聞くと、
「えっ? ない!!ないですよ?・・・・あれ?ないと思いますよ?」
と、最後には自信なさげな返事をする。
「ふふ・・。それもこれから、じっくり観察できますねぇ・・。」
と、私は楽しそうに笑った。
この日の私達はどこから見ても、どこにでもいる普通のカップルだった。
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