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ホテルの部屋に入ると、その豪華さに私は驚く。
「こ、公太さん、ベッドルームが別にあります!」
部屋の中にもうひとつ部屋がある様なホテルには泊まった事がない。
「まぁ…スイートですし…。花さんはベッドルームで着替えて下さい。ドレスも掛けれるでしょうし。荷物は、これかな?」
公太さんに鞄を渡されて我に返り、着替えをしにベッドルームに入る。
( 公太さんにくれぐれも無駄なお金を使わない様に言っておけば良かった。)
と、心の底からそう思う。
「 ドレスも買っちゃうし、婚約指輪も多分高いし、ティアラまで作っちゃうし、極め付けはこの広い部屋…………。」
「やっぱり医者ってセレブなのかな? 」
「でも普段の公太さんは全然、そんな感じしないのだけどな。」
1人でブツブツ言いながら着替えをする。
ドレスを壁にかけて、見つめる。
「まぁ、これはいいんだけど……うん。嬉しいのだけど。」
そんな独り言を言っていたら扉がノックされて、
「何が食べたいですか?」
と、公太さんが扉越しに聞いてきた。
「公太さんは、決まりましたか?」
と聞き返すと、
「実は7時に、ここの中華レストランを予約してあるので、軽い物にしようかと、メニュー見てたのですが…… 式場で食べられなかったサンドイッチが食べたくなりまして。」
その発言にびっくりして慌てて扉を開ける。
「予約って何ですか?」
私の勢いに、公太さんは驚き気味に身を引いて、
「ここの中華レストランが美味しいって評判で、せっかく泊まるのだから一緒に食べようと思って予約しておいたんです。いっぱいだと入れないので……あれ? 中華はお嫌いでした?」
「公太さん、お気持ちは嬉しいですけど、お金使いすぎじゃないですか? 部屋も、ふつーのふつーのとこで良いんですよ? 勿体無いじゃ無いですか!」
と、私が言うと、公太さんは私の手を引いて、ベッドルームの中に連れて行き、ベッドの端に座らせた。
「花さんも、僕もどちらかというと倹約する方ですよね? だから花さんの言う事も分かります。 本当ならちゃんと披露宴もして、新婚旅行も外国とか一週間位行ってみんなにお土産買って、そういう普通の結婚式をしてあげたかったです。でも、今の僕では今日の式だけで息が切れてました。海外旅行なんてとても無理です。だからって言うか、思い出に残ること、自分に出来る事、したかったんです。」
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