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「おおっ・・・。ふかひれ・・しかも姿煮・・・・・」
そんな様子を見て、公太さんは爆笑する。
「ひどっ・・。お姉ちゃんから聞き出すなんて。公太さんはいっぱい食べてるかもしれないけど、初めて目の前で見たんですもの。 テレビとかでは見た事ありますけど。」
「いや。僕も食べるのも見るのも初めてですよ。 花さんの一番、喜ぶお料理って何でしょうか?って聞いたら、寿司、かに、ときて、食べたことないふかひれの姿煮を見てみたいと言っていた、と聞いたので、ちょうどここが美味しいと聞いたところだったので・・タイミング良かったです。」
「本当にこれ1人でいいんでしょうか?」
「勿論ですよ。 贅沢しましょう。今日くらいは。」
「じゃあ、せっかくなので遠慮なく戴きます。」
( 美味しい)
無言になって噛みしめていると、嬉しそうな顔で公太さんが私を見つめていた。
「公太さんも食べて下さい。」
はいはいと、一口食べて、
「美味しいですね。 」
と笑った。
その様子を見て、
「公太さんて、自分が食べるより人に食べさせる方が好きですよね。」
と言うと、
「そうですか?」
と不思議そうに言う。
「だって初めて会った時も、お薦めのパン買ってきたし、屋台の時も種類いろいろ買ってきたし、お店で会う時もいっぱい頼みますよね? 男の人って女性のちょっと頂戴は嫌がるじゃないですか。 でも公太さんは、分けるの抵抗無いですよね?」
「妹のせいですかね? 小さいと沢山は食べれないから、よく買って分けてました。
姉も取って行くし、僕が高校の頃はケーキ3種類買って三等分して、お皿の上に色違いの3種類が一つのケーキみたいに載ってました。 我が家では当たり前だったんですが、グチャグチャで……。 でも、それが美味しいというか。大事な人が美味しいそうに食べるのは嬉しいでしょう? つい、食べさせたくはなりますね。」
「うーーん」
「どうかしましたか?」
「私……太っちゃいますかね?」
「そしたら、一緒にダイエットしましょう。これからは何でも協力していきましょう。」
「はい。」
ご飯はとても美味しかった。
この人を何処まで騙せるのだろうか?
私が突然居なくなったら、裏切られたと思われるのだろうか?
美味しいご飯が広がるのに、心の中は石でもあるみたいだった。
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