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「週末婚て、知ってます?」
アパートに戻り、昼ご飯を食べている時に公太さんが話し出した。
「週末婚?ですか。 知らないです。」
「10年、もうちょい前かな? そういうのが流行ったらしいですよ。 月曜から金曜まで、お互い別に暮らして思いっきり仕事する。 仕事休みの土日に一緒に過ごす事らしいです。」
「へぇ……。私達みたいですね。あ、でも私達は確実に土日にっていう事もないですけど……。」
「花さん。」
食事の手を止めて、真剣な表情をするので、私も食事の手を止める。
「これから倒れたりしたら、花さんの望んだとおり連絡が行くと思います。 でも、大丈夫な時は慌てて来なくていいですから、仕事を優先して下さい。 本当は、花さんが入籍したいと言った時、お断りするつもりでした。 これから先、どうなるか分からないのに花さんの人生を背負う覚悟はありませんでした。すみません。どうしようも無い男ですよね。」
と、公太さんは下を向く。
「そんな事、ありません!」
と、私は強く否定する。
残り少ない人生を無理やり押し付けたのは私の方なのだ。
「でも、花さんが言ってくれた事、嬉しかった。 こんな僕で良いなら一緒にいたいと思いました。花さんの為に、長生き出来る様頑張ります。 海外旅行は無理ですが、一年に一回は国内旅行に連れて行きます。お金の苦労はさせないように頑張ります。
なので……離れているけど仲良く歳を取って行ってください。」
「はい。 はい…………頑張ります。」
頑張りたい。
あなたと2人で歳をとるまで頑張りたい。
喉の辺りまで言葉がググッと出てこようとする。
それを無理に飲み込むと涙が出そうになる。
「学校側が配慮して下さったので、しばらくは土日に来れますよ? 嬉しいですか?」
言いたい言葉を、食事と一緒に飲み込んで、そう言ってみる。
「はい。でも無理はしないで下さいね。 次に花さんが来る時は、式の写真が出来てる頃ですね。 一緒に見ましょうね。」
「はい……。楽しみですね。」
公太さんが私の手料理を美味しそうに食べる。
この幸せがこのまま続けば……と願った。
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