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次の土曜日は、早めに家を出て、予定通り公太さんが仕事に行ったのを確認してからアパートに入る。
公太さんの職場の共犯者は当然、新谷さんだった。
公太さんが医局に入ったら、メールをくれるように頼んであった。
新谷さんがここまで協力的になったのも、あの時、ひとつの約束をしたからだ。
「花ちゃんがそこまで覚悟を決めているなら、反対はもう、しない・・・。でもひとつ、約束してくれないか?そうでなければ、公太に秘密にする約束は守れない。」
そう言われてドキドキしたが、
「体がぼろぼろになると言うが、そんなことはない。内臓に転移はしないとわかっているでしょう?
治療をしても、体は疲れるかもしれないが、内臓は大丈夫だ。 だから、できる限り治療してほしい。
諦めないでほしい。公太のためにも・・・。その約束をしてくれるなら、公太には秘密にするよう努力するし協力もする。」
私はそれに約束をし、停止していた点滴治療を7月から開始する。
6月は結婚式もあったし、準備もあるし、できればのんびりしたかった。
本当は早い方がいいと言われていたのだけど・・・・そこは我儘を言ってしまった。
アパートに入ると、ぐるぐるの眩暈が安心したのか酷くなる。
吐気がする。
公太さんの冷蔵庫・・・いや・・・私達の冷蔵庫から飲み物を取り出し横になる。
独り暮らしの公太さんの冷蔵庫には大きなペットボトルしか入ってなくて、結婚してから小さいのをいくつか入れてもらうようにした。
ちょっと飲みたいときとか便利で、ふたに名前を書いた。
私のは「丸には」・・・公太さんは「こ」
夫婦の決まりごとがひとつできた。
一緒に暮らしていくとこうして、譲ったり、譲られたりしながら生活が混じって行くんだなぁと思う。
吐気がひどい・・でもここにいると幸せも大きい。
耐えられる・・・。そう思った。
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