眠る

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 どのくらい経ったのか、光男は目を覚ました。  久しぶりによく眠ったので、すっきりしていた。  頭が冴えると気持ちも楽になり、ふと、妻と子どもに会いにいこう、と思った。  やり直せなくていい、ただふたりの顔が見たかった。  穴の外は静かだった。  幾分か明るいから、もう夜は明けているだろう。  穴は緩やかな傾斜になっていたので、光男は何とか穴から這い上がった。  外には誰もいなかった。  それどころか、何もない。  ほとんどの建物は倒壊し、街路樹は焼けて黒こげになっている。  空は曇り、砂埃が舞った。遠くからドォン、ドォン、と地鳴りのような低い音がした。  光男は茫然と辺りを見渡した。  光男が深い眠りについている間に、世界は滅んでしまっていた。  今は何時だろう? 確かめようにも、穴に落ちたときに携帯は壊れてしまった。  誰もいない、何もない街をさまよい歩く。  悪い夢だ。まだ自分は眠っているに違いない。  誰もかれもが死の眠りについた世界で、光男は独り、家路へと急ぐのだった。
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