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そんな光男の世話をなんやかやと焼いてやる女がいて、やがてふたりは結婚した。
しかしあろうことか、光男は結婚式まで寝坊した。
なんとか式には間に合ったが、周囲の人は、旦那があれでは苦労すると口々に言った。
周囲の心配をよそに、ふたりは良い夫婦だった。
光男はぼんやりとした男だったし、妻はしっかり者だったから、上手いこと暮らしていた。
ただ、光男の寝すぎるところは相変わらずだった。
ここぞというときに眠りこけてしまう。
やがて子どもが生まれたが、その子が生まれたときも寝ていたし、子どもの行事はほとんど寝過ごした。
光男はこの上なく優しい父親だったが、寝てばかりいるので子どもとの約束を守れない。
これには妻も愛想が尽きて、ある日いつものように光男がぐっすり眠り込んでいる間に、子どもを連れて出ていってしまった。
目覚めたときにはすでに遅く、光男はひとりになってしまった。
光男は寝てばかりいる男だったが、自分の妻と子どもを何よりも愛していた。
光男は打ちのめされ、それからはほとんど眠らなくなり、寂しさを紛らわすため酒浸りになった。
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