異世界のダンジョンが二束三文で買えました

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「勇者がダンジョンに侵入しました」 「ついに来たか」 ニュエムの報告を受け、勇者の顔を拝もうと何処にいるのか聞こうとしたら、その前に答えが解る反応が別の所から来た。 「へえ、今迄知らなかったが、勇者の所在地がダンジョン内限定で頭の中にマーカーとして表示される仕組みだったのか。場所は・・・酒場だな」 最近増えに増えて余った魔力を使って酒場を作ってみたが、これが結構好評で既に常連が居る。酒類は沢山用意して有るので、好みの酒でボトルキープを許可してやったらメチャ人気が出た。 酒の売り上げが余裕で食事の売り上げを上回るから常連が増えれば増える程儲かる。そして居座り続けるものだから魔力が溜まる溜まる。ウハウハですわ。 「アイツか・・・」 酒場の裏口から入り、バーテンダーを務めている悪魔の背後からコッソリと覗いて勇者の顔を確認した。 呼び出した悪魔の殆どが天使と同じで何故か女性ばかりだったので整体マッサージのお店に駆り出しており、その中で唯一男性の悪魔が呼び出された時に酒場のマスター兼バーテンダーを任命して酒場を任せた。 カウンターは一人で切り盛りできるが、テーブル席は無理なので店員として何名か悪魔を追加したら何故かその後は男性ばかりが増えた。そのせいか純粋に酒を楽しむ為の客と、男性店員目当てでやって来る女性冒険者の2種類が酒場に入り浸っていた。 で、勇者は当然ながら男性だったので酒を楽しむ為にここに居ると思われる。つーかオッサンじゃねーかよ。この世界の勇者って老けてんな。 カウンター席に座っていたので勇者の声が聞こえたのだが、既に酔っ払いなのかバーテンダーに向けて愚痴をこぼしていた。 「俺はさぁ、なりたくて勇者になったんじゃないんだぜ? けどよ、信託だか何だかでイキナリ国に連れてかれて王様に『今日からお前が勇者だ』とか言って来たのよ。何だよ、今迄ただの農民だった俺が勇者とかどう考えても無茶だろ? そりゃあ他の奴よりちょとばかし体力あって重い物とか軽く持てる位力は有ったりするし、魔法も何か使えたけど農業の為にしか利用してなかったんだぜ」 その後は支度金だと僅かな金貨を渡された後ダンジョンを攻略せよってふざけんな! だの、冒険者が集まる酒場で旅の仲間は自分で集めろって理不尽だろ! とか、王様の無茶振りについて懇々と語ってはツッコミを入れていた。苦労してんなぁ。俺が想像していた勇者とは大分違った。
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