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新たなモンスターの実力(歌唱力)
九番手は新しく呼んだモンスターでドラゴニュートのヴェシエス。始めは二足歩行のドラゴンが呼ばれると思っていたのだが、羽と尻尾を持つ人型だった。
「龍と言えばブレス。喉自慢な分、歌にもそれなりの実力が有る筈だ」
予想通りに小節の効いた良い歌が聴こえる。古参の皆も驚いている。コレは中々の高得点を出しても良いだろう。9点台が並ぶ高評価となった。
「彼女は姉御肌な気質を持ち合わせていますね」
「皆の後輩だから変な感じはするがな。彼女がピアレを先輩呼びしても違和感しかないから見た目で呼び方を選んだ方が無難だろうさ」
十番手もこれまた新しく呼んだモンスターでドライアドのレノスキア。遂に妖精迄呼べる様になったか。当初は全裸に草で身体の一部を隠した姿だったのには驚いたが、服を着せたら見分けはつかない。
「彼女が歌うと元気が出ますが、コレは問題有りですね」
「ああ、周りから植物が芽を出している。ダンジョンで植物を生やすとは恐れ入る。上手いのに残念だが、コレは人前では歌わせられないな」
点数は高めにしはしたが、諸事情により歌姫になる事はない。しかし、何処かで日の目を見せてやらないと勿体ない程の力だ。妖精系は皆そうなのか?
十一番手が最後の新しく呼んだモンスターでバンパイアのネメシロア。本来なら朝日が苦手な体質だが、ダンジョン内なので無問題。歌声も透き通る様に華やかで聴いていて心地良い。
「コレはヴェシエスと甲乙つけ難いですね」
「まぁ、今回は演歌が主目的だから歌唱力は上でも審査は違う結末になるな」
点数は高めでも、一歩及ばずに終わった。彼女にはバラードや他のジャンルで活躍させよう。夜がとても似合うから酒場で歌わせるか?
「そして真打の登場!」
最後を締めくくるのは飛び入り参加のパンゲだった。
「彼奴が出るなら我も出るぞ!」
「やめておけ、演歌はお前には絶対に向かない。ニュエムと一緒に後で好きなだけ歌えばいい。お前向きの曲も見つかるだろうから」
曲が流れて歌い始めるパンゲ。いや、何これ。涙が出て来るんだが。
「流石は神様なのでしょう。感動で涙が止まりません」
「ふん、今回は彼奴に花を持たせてやる。今度は別のジャンルでカラオケ大会を開くのだぞ?」
「判った。くそぅ、奴に泣かされていると思うと悔しいが、歌で涙が出る程上手いのなら仕方ないか。歌姫には絶対に選ばんがな」
得点は全員が10点満点を出した。こうしてカラオケ大会で歌姫に選ばれたのはモンスターの中で最高得点だったドラゴニュートのヴェシエスに決まった。
「明日リハーサルをやるから観客席で観るか?」
「当然だな」
その夜は遅くまでニュエムとアドジエの歌声がダンジョン内に響き渡るのだった。俺にも歌わせろよ。
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