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第2章 面接
俺らは庭から直接に粗末な鉄の階段を上がる。2階に玄関があり、玄関から入ってすぐ右の応接間へ案内される。俺は1階が気になった。1階は駐車場でもないし、見る限り窓はあるのに、ドアだけがないからだ。つまり庭からは1階に入れないのだ。居住スペースではないのか? そう何気なく尼僧服の女にも尋ねたが、倉庫だ、ということだった。だがそう答えた彼女の、警戒するような鋭い眼付が気になった。
家の中は暗く、廊下の電球の傘も年季の入った埃をかぶっている。だが通された応接間は比較的きれいに保たれている。調度品や家具も安物ではなかった。
尼僧服の女は、俺を皮張りの立派なソファへ促す。
「それにしても少年。なぜ眼帯なんかつけてる? もらいものでもあるの」
彼女は応接テーブルの前に立ち、俺の左の眼帯をじっと見つめた。俺の眼帯について初対面の人に突っ込まれるのには慣れてる。別に眼に怪我などがあるわけではないのだが、いつもなら面倒くさいから適当なことを言ってごまかす。どうせ相手も本気で聞いてない。だが今日はそんな気にすらなれなかった。
「少年ちゃう、日野タクトだ。俺が眼帯つけてる理由なんかあんたにはどうでもええやろ」
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