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「この名刺は日野ひめ経由でしか流通させてない。確かにひめの知り合いではあるようだ。彼女がここのオーナーだってことは?」
しらない……。探偵社のオーナーだなんて初耳だ。ただ者じゃないとは思ってたけど。
てことは、この尼僧服の人は従業員なんだろうか。あれ? じゃあ金曜は?
「奇妙だな。名刺は持ってるが何にも知らないとは? タクトとやら、君、何者なんだ」
「あんたこそなに」
いつまでも詰問調の女にむっとして俺は言い返す。
「日野金曜が学校に行けないのはあの鎖のせいだろ。監禁してるんじゃないだろうな。説明次第じゃ警察に行く」
尼僧服の女はかわせみのような鋭い眼を光らせる。ちょっと笑ったようだった。
「警察ね。行けるものなら行ってみな」
ぴんと指で名刺をはじく。テーブルの上を滑って戻って来た名刺を俺は押さえて彼女を睨む。女も俺を睨み返した。
視線の火花が散る中を、すがすがしい声が通る。
「そのへんにしとき、水曜。タクトさん、ようおいでやす」
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