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俺は差しだされたカップには手をつけないまま、木曜さんの顔を見すえる。
「お話はわかりました。細かいことはお聞きしません。けど、彼女が監禁されてるんじゃないってしるしを見せてください。それまで帰れません」
困惑と共に、何か知性のひらめきのような光が木曜さんの眼の中できらめいた。彼女のかたちのよい唇に、形だけではない微笑みが浮かぶ。何か言いかけた木曜さんが、戸口の物音にはっとしたように立ち上がった。水曜もすぐに腰を浮かす。
「金曜!」
じゃら、と金属の鳴る音がした。
鎖に繋がれた重たげな手と角のある頭を戸口にもたせかけ、彼女は立っている。日野金曜だ。曇ったような眼でこちらを見据えていた。だけど何だか……何かが違う。雰囲気だろうか。
「なぜここに。火曜はどうしたんだ」
水曜が低く鋭く呟いて金曜へ駆け寄る。しかし金曜に視線を向けられると、なぜか固まってしまった。金曜は水曜を置き去りに、まっすぐ俺の方へ歩み寄ってくる。
ソファに座ったままあっけにとられている俺を見下ろす。腕組をして遠慮のない視線で俺の顔をじっと見つめたかと思うと、木曜さんへ顔を向けた。
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