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「何だと!? 里親は中年のおばちゃんがなるのが相場じゃないのか!? 今からでもいい、俺と代われ」
後ろからかなり本気で首をしめられてうぐぐぐ、と俺は呻く。
「やめろよ」
すぱーん、という音がした。途端に呼吸が楽になる。咳き込みながら見上げると、同室の先輩が雑誌を丸めて立っている。その雑誌ではたかれたらしい仲間は頭を押えて唸る。そいつを足で追っ払いながら、先輩は少し笑った。
「よかったな。うまくやれよ」
先輩はもうじき近くの工場に就職する。俺は黙って頭を下げる。ショルダーバッグに抱えてた服をつめこんでジッパーをきちんとしめ、肩にかけて立ち上がった。
ちょっと緊張しながら玄関に顔を出すと、お養母さんは外で待ってはるわよとおばちゃんが教えてくれる。
俺はおばちゃんに挨拶をすませ、自動ドアを出かけて振り返った。施設の仲間どもが俺の背中に紙つぶてをぶつけたからだ。いって。
「最後の最後だぞ。泣いて行くなとか言っとけや、おまえら」
あほか、とあきれたように先輩が言った。
「さっさと出てけ。とりあえず帰ってくんな」
そう言って苦く笑う。
遊びにこいや、ただしお義母様と一緒に、とか言っている仲間どもに、俺は手を上げる。
「じゃあな」
「色男!」
「二度と戻ってくんな!」
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