第1章   まずは訪問

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信頼できそうなソーシャルワーカーにこっそり相談したことがある。彼は、君に見えているものは幻覚だと言った。その後速やかに精神科行きが決定したので、医者には何も見えないと言って逃げた。それでわかったのは、見えないのが普通だってことだ。これ程鮮明に見えるものが幻覚だというのならば、この世界が全て夢幻だとしてもおかしくない。でなければ、本当に俺がおかしいんだろう。 その日、菜園の魂たちといた俺に、彼女……ひめさんが声をかけた。彼女がいったいどこから入り込んだのかはわからない。最初は施設の関係者だと思った。 彼女は掌に朝顔の魂をのせている俺を見た。そして、言った。やっと見つけた、と。  俺は何言ってるんだろうと黙って彼女の様子を見てた。その俺の横に、彼女はしゃがみ込み、俺の掌の上を指差してほほえむ。 『御魂が見えてるよね?』 彼女は、俺が友達にしている小さな精霊たちは御魂と言って、この世のもの全てに存在する小さな神のかたちなのだと言った。 『君のその能力のことでもし何か困ったことがあったり、知りたいことができたら私に手紙を書きなさい。書いたら外のお地蔵さんの祠に入れて。誰にも内緒で』 わけがわからないままだったが、俺は、彼女には俺と同じように小さな精霊達が見えている、ということが物凄くうれしかった。そんな人は今までどこにもいなかったからだ。  彼女も幽霊かもののけか、俺の幻覚かもしれなかったが、彼女の正体など何でもいいと思った。 俺は手紙を書いた。     
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