第1章   まずは訪問

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数日後になって見に行くと、祠のすきまにひっそりと白い紙が挟みこまれている。それが彼女からの返信だった。幻では、なかった。 それからも彼女は度々俺の前に現れた。月に1回程度、水やり中の早朝の庭に、下校途中の通学路に、彼女はぶらぶらと気まぐれに現れた。そしてその度に御魂について教えてくれた。 俺は彼女が何者なのか知らない。浮世離れしたその格好から、どこかの財閥のお嬢様か何かかなと推測してはいた。でも尋ねてもはかばかしい返事がないのだ。しつこく聞くとうるさがられて彼女がいなくなってしまいそうで、ちゃんと聞けなかった。俺は携帯なんかもってなかったから、こちらから連絡をとるには手段が置き手紙しかない。待合せしたくて会ってる時に日時を指定してみても、彼女はまるで馬耳東風だった。たぶんその時間に現れるのは無理だとおもうわ、わからないけど。って笑うだけなのだ。そして俺がいいかげん怒って彼女を忘れた頃にまたふらっと姿を現す。彼女は本当になぜ俺にかまうんだろう。 出会ってからもう5年も経つのか。いつのまにか養子縁組の手続きも進んでいて、俺は彼女に引き取られることになったわけだけど。 何を話せばいいのかな。俺はそっと彼女を盗み見て眼を落とし、その右手に光るものを見つけて思わずあ、と言った。 「どうしたの?」     
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