第1章   まずは訪問

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 振り返るひめさんに俺は慌てて口ごもる。 「指輪。……してはるなって。すいませんへんなこと言って」  本当は正直がっかりしていた。指輪してるってことは、彼氏がいるのかも。 ひめさんはこれ? と手を差し出す。細い指に嵌った銀の指輪には黒い刻印がある。 「とても古い指輪なの。300年以上前のもの。これは土星の刻印」  土星? と俺はぐねぐねした曲線の刻印を見つめる。ごつごつとしたシルエットのその指輪は、鈍い光を放っている。アンティークてことは彼氏のプレゼントじゃないのかも。 「あの、どうして俺を引き取ろうって思ったんですか」  思いきって聞くと、彼女はまっすぐ前を見てにっこりした。 「君にはこれからしてもらうことがあるの」  え? どういうことか俺はおずおず聞き返そうとしたが、彼女は突然立ち止まってしまう。タクシーが目の前に止まった。彼女は開いたドアを指差す。乗れってことらしい。 車に乗り込んだ後、ひめさんは俺に名刺を渡してくれた。日野探偵社、と書いてある。ここへ行くというのだ。探偵社? と頭にはてなが浮かんだが、寄り道でもするのか、その近くに家があるのか。それにしても日野というのは彼女と同じ姓だ。     
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