君とぼく

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君の家に来て三度目の雪の降る日、君は大きな男の人を連れて来たね。あいつは君のことが欲しいんだってぼくに言ってきたから、ぼくはぼくの子分になるなら許してやるって言ってやった。君の一番は譲らないけどねっていうのも忘れずに。 いつの間にか男は居着いて三人の生活になった。男は子分らしくぼくの毛並みを整えたり、週に一度は美味しい魚を提供してきた。仕方ないからお前もぼくが守ってやるよ。 四度目の秋を迎える頃、君は帰らなくなった。訳も分からなくて寂しかったけど、冬を迎える頃に帰ってきたね。赤ちゃんと一緒に。小さくて、ふくふくしていて、とても弱い存在。 ぼくが守ってやるって決めたんだ。 七回目の冬が過ぎる頃、とても体がしんどくなった。 すぐに疲れるから歩かなくなった。お腹も減らない。ご飯を食べない。心配させたくなくて頑張ったけど、次第に歩くのがふらふらするようになった。 春の暖かい風の中、君と一緒に病院に連れられて行くと、君はお医者さんに泣かされたね。君をいじめる悪い奴をやっつけようとしたけど、もう体が上手く動かせなかった。 困ったな。皆を守るのはぼくの役目なのに、もう出来ないよ。 おうちにかえったら君の話を聞いた皆は泣いてしまった。座布団に横になったぼくの周りを取り囲んでる。大好きな皆を慰めようと頑張って君の手を舐めたら、もっと泣かせてしまった。     
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