#彼からの優しさ

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そして、連れてこられてたのは屋台だった。 「おじさん綿飴(わたあめ)ひとつ」 「巽くん…?」 綿飴を買う巽くんが、私は不思議で仕方なかった。 「嫌い?綿飴」 「え、好き…」 「せっかくの花火大会。満喫(まんきつ)しなきゃもったいないよ」 いつの間にか出来た真っ白な綿飴を、目の前に差し出される。 「ありがとう…あっ、お金!」 受け取ってから、奢ってもらったことに気づく。 でも巽くんは『別にいらない』とだけ言って。 背を向けてしまった。 次は、どこに行くつもりだろう…? 「食べないの?」 「えっ!」 「綿飴」 「あ、いただきますっ!」 「どうぞ」 けして表情豊かでは無いけれど、彼からの優しさは十分に伝わってくる。 巽くんに連れ出されて、助かったかも…。
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