01 創造主

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 どうして、そんな彼が美聖に声を掛けてきたのだろうか……。 (私なんかより、適任は大勢いるだろうに……)  ――合格だ……と、降沢自ら、美聖に告げた。  あの言葉の意味。  美聖の目が良いというのは、どういうことだったのか?  彼の試験内容は、おそらく『ユリの絵』だったはずだ。 『慕情』という名前の絵は、降沢が描いたものなのだそうだが……。 (普通、自分が描いた絵を見て、腰を抜かしそうになっている人間を採用しようと思うのかしら?)  美聖に、霊感はない。  もしも、霊能力者だったら、もう少しちゃんと鑑定することも出来たはずだろう。  少しゾッとした。その程度で……。  目が良い人間を雇いたいのなら、霊能者を雇えばいいのではないか?  …………いくら考えても、さっぱり分からない。 「あっ、ほら……一ノ清さん時間ですよ」  時計に目を落としつつ、降沢が小声で伝えてきた。  ほとんど空気のような存在に成り果てているにも関わらず、こういうことには、目敏い。 「あっ、ごめんなさい! 今、看板を出してきます」  慌てて美聖は、玄関の前に立てかけられている四角い店の看板を手に、外に飛び出した。  午前十一時開店だ。     
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