01 創造主

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 ゆったりと時間が流れている古民家カフェは、大体ふらっとお客さんが立ち寄るスタイルが多いので、開始早々お客さんが入店するケースはまれだ。  ――しかし、今日は……。 「…………あっ」  外に出た途端、人がいた。  黒縁眼鏡に赤髪の男は、気温が高いにも関わらず、黒いズボンに、分厚いジャケットを肩に引っかけている。  しかも、今の今まで、煙草を吹かしていたらしい男は、美聖が現れた途端、それを捨てて、重そうな靴で、ごしごしと地面にこすりつけていた。  ジャケットの中から、覗く左腕には、赤い薔薇のタトゥーが入っていて、幾重にもブレスレットがぶら下がり、中指に骸骨スカルの指輪をはめていた。  いかにも、ロックミュージシャンのような容姿をしている男は、『アルカナ』の雰囲気とは明らかに一線を画した異質な存在であった。  ――いや。 (この人、どこかで……) 「あの……?」  おそるおそる声を掛けたが、美聖の声が届く前に男が尋ねてきた。 「なあ、開店したんだろ?」 「……あっ、はい。たった今」 「じゃ、もう、いいよな。お邪魔しまーす」 「えっ? あっ、ちょっと!」  男は強引に、美聖を押しのけるような形で店に入って行った。 「いらっしゃいませ……」     
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