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「ふーん。門前払いってわけか? 俺、知っているんだぜ。降沢はここで絵のモデルを探してるって……」
「なっ!?」
驚愕したのは、美聖の方だった。
(そんなこと、知らないわよ)
一度もそんな話を聞いたことがない。
降沢在季の名前で、ググってみたことはあるが、幾つかのコンクールに過去入選経験があることと、作品数が少ないという情報のみだった。
(いつも、やる気なさそうに、フラフラしていたのは、そういうわけだったのか………………なんて)
……いきなり、信じられるはずもない。
「あら、嫌だ。私、貴方のことテレビで見たことがあるわ」
そんな美聖のパニックぶりを知ってか、知らずか、トウコがさりげなく、男性に注目を戻してきた。
「確か……貴方、バンドのボーカルの最上もがみ……」
「えええっ!?」
「美聖ちゃん?」
そこにまた大仰に反応した美聖に、トウコの方がぎょっとした。
「嘘でしょ? トウコさん!?」
皆まで聞かなくても、その名前は知っている。
(まさか……。だって、有り得ないわ!)
顔を真っ赤にして、興奮する美聖に、観念したのか、男性は溜息を吐き捨てた。
「最上 初……だよ」
「うわっ! まさか本物!?」
「化物でも見たように、騒ぐなよ。ミーハー」
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