01 創造主

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 口はとてつもなく、悪い。  けれど、美聖は生まれて初めて、芸能人を間近で見たのだ。黄色い声をあげたくもなるだろう。  しかも、こんなに間近で……だ。 (顔、小さい……)  テレビで見るより、一層小さく、整った目鼻立ちをしていた。  最上 初にファンではないくせして、美聖はドキドキしてしまった。 「最上初さん……! こんなところでお会いできるなんて、とても嬉しいです」 「本当か? その割に、さっきはおもいっきり、胡散臭い顔で睨んでなかったか?」 「とんでもない! ちょっと、このお店の客層と違ったイメージだったので、びっくりしただけで……。まさか、ウィザードのボーカルが山奥のこんなところまでいらっしゃるなんて……」 「ウィザード?」  降沢があからさまに、分からないといった面持ちで、奥の席で首を傾げている。  美聖はぽつりと呟かれた言葉を聞き逃さずに、彼の隣に行って、小声で降沢の耳元に答えを吹き込んだ。 「バンドの名前ですよ。ウィザード。今、若い子に絶大な人気なんですよ」 「ふーん。そうなんですか」  降沢は、本当に知らないようだった。  北鎌倉とて、電気は通っているだろうに、テレビを見ないのだろうか……。     
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