01 創造主

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 ……が、短気な最上は、机をばんと叩いた。 「降沢が絵を描くと幸せになるんだろ? だから、俺は、わざわざ鎌倉くんだりまでやって来たんだ。何処にいるんだ? 画家センセイは?」 「最上さん。……あの」 (ここまで来ると、降沢さんが出てこないと、収まらないんじゃ……)  美聖は、トウコの袖を引っ張った。  トウコがそれを受けて、何ごとか口を開きかけた時……。 「煩い人ですね。会わせるも何も、僕は最初からここにいましたよ……。最上初さん」  言葉をさえぎるようにして、降沢が美聖の隣にやって来た。  腕を組んで直立している姿は、いつもの猫背で頼りなさそうな青年とは思えなかったが、しかし最上にとっては、降沢が思った以上に、若かったことと、くたびれた格好に驚愕したらしい。  目を丸くして、口をぽかんと開けていた。 「…………あんたが、降沢?」 「ええ。貴方がご所望の降沢 在季です」 「嘘だろ? てっきり、ここの学生バイトかなんかだと……」  一応、最上も降沢の存在自体には、気づいていたようだ。  美聖にも、最上の気持ちが嫌になるくらい、よく分かる。  画家らしくない……。  その一言につきた。     
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