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「貴方の言う、幸せになれる絵なんて、そんな絵が本当に存在しているのなら、僕が描いて欲しいくらいですけどね。常識的に考えて、そんなものが存在してるはずないじゃないですか? ロックミュージシャンたる貴方がどうしてそんな世迷言を信じたのですか?」
「おいおい、随分と挑戦的だな……。画家って、みんな、こういうキャラなのか。教えてよ。お姉さん?」
「さあ……。私にもよく分からないというか」
最上が降沢を睨みつけつつ、美聖に訊ねてくる。
そんなこと、美聖が知るはずがないではないか……。
(この人が何を考えてるのか、こっちが知りたいわよ……)
心と裏腹に、曖昧な微笑を浮かべていると、降沢が美聖に目を向けた。
「何ですか 。降沢さん?」
「あっそうだ! 僕、いいことを思いついたんですけど、最上さんは、僕に絵を描いて欲しいということでしたよね?」
「あんた、俺の話聞いていたのか?」
「……つまり、そういうことなのだから」
降沢は一人で総括すると、人差し指を美聖に向けた。
「だったら、彼女に占いをしてもらいましょう。その結果次第で、僕も考えるってことでどうですか?」
「…………はっ?」
よろけそうになった美聖の身体を、トウコが支えた。
どうして、ここで美聖の名前を出してくるのか……。
彼は明らかに降沢の「絵」が目的で、占いを求めて来たわけではないのだ。
興味のないものは徹底して信じない性格が、表情に滲み出ている。
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