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タロットカードを使う占い師にとって、王道といっても過言ではないカードは、市販の教本も多く出回っている。
美聖の占いは、自己流だ。
占い学校に行ってコネを作るか、師匠に弟子入りして場所を提供してもらわないと、対面鑑定の仕事に就くのは大変だと言われることもあるので、自分の感覚一つで仕事にすることが出来た美聖は、本当に運が良いのだろう。
しかも、……若者に大人気のバンドの花形ボーカルを鑑定することが出来るなんて、よく考えたら、とてつもなく奇跡的なことなのではないか。
(ともかく……せっかくのチャンスだもの。頑張ろう……)
美聖は緊張しつつも、円卓の方に最上を誘導した。
他に客もいないので、カーテンは引かずに、美聖の向かい側の席を勧める。
「こちらにどうぞ……」
「はいはい」
最上は降沢に一瞥をくれつつ、大人しく椅子に収まった。
「何を占えば良いんでしょうか?」
「当然、今後の仕事について……だろう」
「……分かりました」
美聖は、タロットカードを円卓の上でシャッフルした。
展開スプ方法レッドは、ケルト十字法。
これも、どの入門書にも書いてある初歩的な占い方だ。
机の上に十一枚のカードを置く。
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