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十字架を円で取り囲むような展開方法は、ケルト人が信仰していた円と、キリスト教を表す十字架を融合させたような形だ。
小アルカナカードの逆位置ばかりが目立ち、最終結果が『愚者』という大アルカナカードの逆位置だった。
愚者のカードは、若い男性が陽気に笑いながら、崖に向かって歩いて行く構図を描いた絵札だ。
正位置は『冒険』や『挑戦』を意味しているが、逆位置は確か……。
『抜け殻』『無謀』『誤った道』『無謀』。
――つまり、今後の仕事は、上手くいかない。
しかし、それでは、ただの直訳だ。
(……ううん)
そうじゃない。違うのだ。
根本的な流れが見えない。
一枚のカードの意味をリーディングするのではない。全体で見るものだということを、美聖は知っていた。
――カードが、ぼやけている。
それは、独特の表現だと、トウコに言われたことがあるが、美聖にはたまにあることだった。
(多分、この人はそんなことを知りたい訳ではないんだろうな)
だから、答えが曖昧になる。
占術の中で、もっとも人の気持ちを知るのに適していると言われているのがタロットカードだ。
鑑定者の意識は、嫌と言うほど伝わってくるものだたった。
「……で、どういう意味?」
最上がカードではなく、美聖を凝視している。
目が合った。
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