01 創造主

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 鎌倉の店の閉店時間は早い。 『アルカナ』も十七時閉店だった。  終わりが早いのは、助かる。  けれど……。  いつもなら、真っ先に帰宅する美聖は、今日に限っては、帰るに帰れなかった。 (絶対に、問い詰めなくちゃ……)  このもやもや感を引きずったまま、帰途につくことなどできるはずがない。  店の営業が終了するのを待って、美聖は厨房で作業をしていたトウコを捕まえて、腹にたまっていることを、おもいっきりぶちまけた。 「トウコさん!? どうして、あんなふうに断ったのですか!? 教えてください!!」 「…………えっ、何が?」 「何がって……」  そんなに、遠い目をしないでもらいたかった。  つい数時間前のことである。 「……昼間の最上さん、まるで、追い出したような感じでしたよ」 「ああ、そのことね」  まるで、今思い出したのかように、トウコが微笑んだので、美聖は更に顰めっ面になった。 「幸い、最上さんがお客さんと出くわすことなく帰って行ったので、騒ぎにはなりませんでしたけど、あの対応はまずかったような気がします」 「そうかしら……」 「普通のお客さんだったら、絶対にトウコさんはあんな帰し方はしませんよ」     
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