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鎌倉の店の閉店時間は早い。
『アルカナ』も十七時閉店だった。
終わりが早いのは、助かる。
けれど……。
いつもなら、真っ先に帰宅する美聖は、今日に限っては、帰るに帰れなかった。
(絶対に、問い詰めなくちゃ……)
このもやもや感を引きずったまま、帰途につくことなどできるはずがない。
店の営業が終了するのを待って、美聖は厨房で作業をしていたトウコを捕まえて、腹にたまっていることを、おもいっきりぶちまけた。
「トウコさん!? どうして、あんなふうに断ったのですか!? 教えてください!!」
「…………えっ、何が?」
「何がって……」
そんなに、遠い目をしないでもらいたかった。
つい数時間前のことである。
「……昼間の最上さん、まるで、追い出したような感じでしたよ」
「ああ、そのことね」
まるで、今思い出したのかように、トウコが微笑んだので、美聖は更に顰めっ面になった。
「幸い、最上さんがお客さんと出くわすことなく帰って行ったので、騒ぎにはなりませんでしたけど、あの対応はまずかったような気がします」
「そうかしら……」
「普通のお客さんだったら、絶対にトウコさんはあんな帰し方はしませんよ」
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