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大きな丸い円卓の前には一対一で向き合うようにして、椅子が置かれている。
機密性保持のためなのか、ビロードのカーテンで喫茶スペースから仕切ることもできるようだ。月と星がデザインされているテーブルクロスの存在は、占いめいた雰囲気が十全に発揮されていた。
(私……対面鑑定、初めてなんだけどな……)
電話鑑定に関しては、慣れつつあったが、やはり対面鑑定となると、どきどきする。
お客さんのことや、トウコさんを怪しく思っていた今までの自分を殴ってやりたかった。
この内装で、一人も来ないということは絶対に有り得ないだろう。
「そんなに、緊張しなくても大丈夫よ。美聖ちゃんは美聖ちゃんらしくしていてくれれば良いんだから……」
「……はい……頑張ります」
美聖は付け焼刃な笑顔を作ってみせながら、円卓の前まで歩いた。
(本当に私で、良かったのかしら?)
疑問が尽きない。
そもそも、対面鑑定を希望している占い師は多いのだ。
特に、このような雰囲気のある場所で、鑑定をすることができるのなら、応募者も殺到するはずだ。
「あの……トウコさん?」
不安をそのままに、呼びかける。
しかし、後ろにいるはずだと思っていたトウコはいなかった。
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