01 創造主

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01 創造主

 五年前のことだ。  北鎌倉の画家、降沢(ふるさわ) 在季(あき)は祖母から受け継いだ古民家を、作品制作のためのアトリエに改築したが、敷地が広大で部屋も沢山余っているため、せっかくならと一部をカフェとして提供することにした。  そこで店長を任されることとなった占い師のトウコさん……こと、遠藤(えんどう)浩介(こうすけ)さんがどうせなら『占い喫茶』にしてしまおうと提案し、このような状態となったそうだ。  今までは、トウコ一人が占いをしていたが、給仕業務が疎かになったため、もう一人バイト占い師を増やそうと話をしていたところで、美聖と出会い……雇うに至ったと。そういう経緯らしい。 (何とも、羨ましい話だわ……)  若くして職業画家でやっていける程の才能に恵まれ、莫大な財産を受け継ぎ、そしてこの広いアトリエ兼自宅に一人で暮らしている。  降沢という男……。  正直、美聖にとっては、妬ましいくらいだった。  お金さえあれば……と、何度思ったことだろう。     
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