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(……まあ、でも、画家と名乗ってはいるけど、創作意欲は低いようね)
彼が店にいない日を、今まで一度も目にしたことがない。
こんなに暢気で務まるのだから、画家とはお気楽な商売なのだろう。
(いけない、私は仕事よ。仕事……)
働かざる者、食うべからず……だ。
美聖は手にしていた布巾で、テーブルを順に拭いていた。
そのついでに、各テーブルの花瓶に、季節の花を活ける仕事も、美聖の大切な仕事となっていた。
「ふふふ。美聖ちゃん、だいぶ慣れてきたんじゃない?」
「……そう……でしょうか」
トウコはいつも繊細な気配りをしてくれる。
今日も逞しい上腕二頭筋をTシャツから覗かせながら、カウンター席の向こう側の厨房で、自慢の優しい味のするデザートを作っていた。
サングラスを着用したままなのは、ちょっと怖いが、出会った頃の印象はそのままで、面倒見の良さはピカイチだった。とても、慈悲深く、温かい人だ。
「私……飲食関係務めるの初めてで、まだオーダーの時、手が震えていますよ」
「いいのよ。メインは占いなんだから、接客はおまけって感じで」
「おまけ……ですか」
「占いも、気楽にやってくれればいいのよ」
「あははは」
愛想笑いで、流してみるものの……。
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